高校生が食生活を考える「お弁当プロジェクト」

koukou_1l

弁当プロジェクトスタート

平成28年の5月から10月にかけて、東京都立園芸高等学校食品科調理コース3年の女子5名、男子6名の計11名が、食品科主幹教諭の田川さやか先生と大津理恵先生の指導のもと、総合実習の時間に、弁当をテーマに高校生の食生活を考えるプロジェクトに取り組みました。

1.5月25日~31日  弁当調査(持参回数)

手作り弁当を持参する回数を、全学年の各クラス男女別に調査しました。

koukou_2l
各クラスで実施した弁当調査用紙
2.6月7日 弁当調査(持参回数)の分析と次回調査(中身)の準備 2~4時限

①弁当調査(持参回数)の分析…各クラスの手作り弁当の持参回数4回以上の人の割合を算出しました。そして、グループごとに集計結果をもとに話し合い、発表しました。

生徒から出た意見
・学年が高くなるにつれて弁当持参が減る。
・弁当を持ってきているのが4回以上の人は弁当持参が習慣になっている。

koukou_3s

弁当調査の分析

②弁当調査(中身)の準備…弁当調査レポートの記載方法を聞き、各自で弁当箱の大きさを測る物差しを作成しました。弁当レポートには、学校内の生徒で、購入した弁当1つ、自作弁当2つの計3つの弁当を調査し、その内容を記載しました。調査は、弁当箱の容量が分かるように、弁当箱の下に弁当箱の大きさ測定用物差しを置き、弁当の写真撮影をし、弁当の高さを測りました。また、購入の理由、弁当の内容を聞きました。そして、その弁当の問題点と改善点と思われることを記載しました。

弁当箱の大きさ測定用物差し作成
生徒が作成した弁当箱の大きさ測定用物差し
生徒が作成した弁当箱の大きさ測定用物差し

③自分の理想の弁当を作成…インターネット検索なども利用し、弁当のコンセプトを考え、理想の弁当の内容と材料、完成図を各自作成しました。

3.6月7日~10日 弁当撮影・レポートの作成 昼休みと放課後

昼休みに生徒の弁当の写真を撮影しました。前回の授業で作成した弁当箱の大きさを測る物差しを使用し、弁当のサイズや容量を測りました。それぞれの弁当のすぐれている点、問題点や改善点を考えてレポートを作成しました。

レポート
4.6月10日 弁当写真を発表用に作成

弁当写真データをパソコンへ取り込み、プリントアウトしました。

5. 6月28日 男女高校生の弁当レポート発表 2~4時

提出した弁当レポートへの先生からのコメントを見て、発表原稿を作成し、調査した3つの弁当の写真を紹介しながら、3つの弁当の良い点、改善点等を11人がそれぞれ5分ずつ発表しました。
その後、3歳~5歳の幼児、高校生男女、高齢者男女(身体活動レベル普通)を対象とした弁当作りのために3班に分かれ、理想の弁当レシピを考え始めました。

★みんなの考察
・買った弁当は、野菜が少ないものが多い。
・家庭で作る弁当は、栄養バランスを考えて作られているものが多い。
・外食や弁当も野菜の量で選ぼう。

弁当レポート発表
弁当レポート発表
 
6.9月27日 対象者に合わせた弁当レシピ作成 2~4時限

日本女子大学家政学部教授の高増雅子先生が来校し、若者の食生活について授業をしていただきました。若者の食生活で問題になりがちな点について、高校生が意識し、改善につなげるため、朝食の大切さ、食事の質を高める組み合わせ、共食の利点、栄養バランスがよい日本型食生活について、また機能性表示食品制度やスマイルケア食など新しい取組みについてもお話をしていただきました。

これから生徒が作るお弁当については、弁当箱に主食3、主菜1、副菜2の割合で詰める「3・1・2弁当箱法」は食事のバランスが目で見えてわかりやすいことを示しました。高校生がこれからの食生活に向けて知っておくととても役立つ内容でした。

その後、高増先生が、各班が作成した弁当レシピを事前にチェックし、栄養や味のバランスなどの問題点について指摘し、改善策をアドバイスしていただきました。幼児向けの弁当は食べやすさを考える、高校生向け弁当はタンパク質が多すぎないように注意する、高齢者向け弁当は、塩分を適量に押さえる、噛み切りやすさも考慮するなど、先生のアドバイスを受けて、理想の弁当作りに向けてレシピを修正し、設計図を完成させました。食材の必要量の計算、カロリー計算も行いました。

高増先生よりレシピ指導
高増先生よりレシピ指導
指導いただいたことを踏まえて弁当レシピ修正
指導いただいたことを踏まえて弁当レシピ修正
 
7.10月12日 理想的な弁当の調理 2限~4限

各班が実習を行うまえに、高増先生から弁当を調理するときの衛生上の注意や弁当の詰め方のコツを、デモストレーションをしながら教えていただきました。

各班で調理が始まると、先生には各班をまわり、調理法や詰め方を指導していただきました。
弁当が完成したら、コンセプトや工夫したところなどを説明しました。

弁当は、作った班ごとに共食をしましたが、実際に食べることで、対象者にあった味付けや量がわかり、弁当の感想などを話している様子が見られました。高増先生や田川先生から、講評をいただきました。

弁当の詰め方のデモンストレーション
弁当の詰め方のデモンストレーション
弁当箱に料理を詰める
弁当箱に料理を詰める
 
各対象の弁当の説明
各対象の弁当の説明
 

みんなで考えてつくったお弁当

★幼児向けの弁当

・栗ごはん
・豚のしょうが焼ロール
・ニンジングラッセ
・ほうれん草のごま和え
・さといもの煮っころがし
・プチトマト、ゆでブロッコリー

幼児 弁当箱容量400ml
幼児 弁当箱容量400ml

工夫したポイントと感想

・秋を感じられるように栗ごはんにしたが、市販のパックを取り入れ手軽にできるよう工夫した。
・しょうが焼きは、かわいく、食べやすくするため、楊枝に刺して焼き、カラフルなピックに刺し替えた。

★高校生向けの弁当

・ごはん(じゃこ、黒ゴマのせ)
・甘辛照り焼きチキン
・卵焼き(ニンジン、赤パプリカ、ピーマン入り)
・ほうれん草のゴマ和え
・ポテトサラダ(ニンジン、プロセスチーズの角切り)
・プチトマト、ゆでブロッコリー

高校生女子 弁当箱容量600ml
高校生女子 弁当箱容量600ml
高校生男子 弁当箱容量900ml
高校生男子 弁当箱容量900ml

工夫したポイントと感想

・卵焼きやポテトサラダに刻んだ野菜を入れた。
・高校生向けなのでボリュームのある弁当にした。
・ごはんにかけたじゃこの分量が多かった。湯通しして入れると塩分を減らせると、高増先生からアドバイスを受けた。

◆高齢者向けの弁当

・ごはん(梅干しのせ)
・シラス入り卵焼き
・筑前煮
・ほうれん草のおひたし
・紅白なます
・黒豆

高齢者女性 弁当箱容量500ml
高齢者女性 弁当箱容量500ml
高齢者男性 弁当箱容量700ml
高齢者男性 弁当箱容量700ml

工夫したポイントと感想

・ごはん→卵焼き→煮物→紅白なます→黒豆の順に詰めた。
・塩分があまり使えないのが厳しかった。そのかわり出汁をきちんととったので、塩分を控えめにしても素材の味や出汁がよく引き立ち、やさしい味になった。
・油をあまり使っていないので、私たちには少し物足りない感じがした。
・和食にはいいところがいろいろあることに改めて気づいた。外国で注目されるのもわかった気がする。
・時間があるときは自分でもおかずを作ってみようと思った。
・栄養士を目指しているので勉強になった。


高増雅子先生の講義より
日本女子大学家政学部教授。専門は、食生態学、調理学、家庭科教育   
高増雅子先生
 

◆食生活のポイント◆
・朝食を食べよう。
・誰かと一緒に食べると食欲が増す。
・栄養バランスは、1日のバランス、1週間のバランスで考える。
・日本型食生活がおススメ。
・ごはんをベースに魚や肉、野菜を摂ろう。
・調理力をつけよう!

高増先生のお手本
高増先生のお手本
お弁当を食べるときはお茶も一緒に

◆弁当作りのコツ!「3・1・2弁当箱法」◆

“1食に何をどれだけ食べたらよいか“について、料理の組み合わせの物差しです。食べる人の体にあったサイズの弁当箱に、主食・主菜・副菜料理を3:1:2の割合の容積比でつめると、適量で栄養素のバランスがよいのです。

「3・1・2弁当法」5つのルール
・食べる人にとってぴったりのサイズの弁当箱を選ぶ。
・料理が動かないようにしっかり詰める。
・主食3・主菜1・副菜2の割合に料理を詰める。
・同じ調理法の料理(特に油脂を多く使った料理)は1品だけ。
・全体をおいしそう!に仕上げる。

koukou_20

(「NPO法人食生活実践フォーラム」HPより)

◆弁当を詰めるときの注意◆
・弁当は作ってから時間をおいて食べるものなので、衛生面に細心の注意が必要。
・弁当箱はきれいに洗い、乾かす。
・おかずは形がしっかりしたものから入れる。
・おかずはできるだけ水気を切ってから入れる。
・作り置きのおかずは冷蔵庫に保存しておき、電子レンジにかけるなど必ず火を通す
・ごはんを詰めたら、しゃもじでならし、ラップで押して整える。
・ごはんとおかずが冷めてからふたをする。

◆お弁当箱の選び方
 弁当箱の大きさの目安(身体活動レベルが普通の場合)
 幼児:400ml
 高校生男子:900ml  高校生女子:600~700ml
 高齢者男性:700ml  高齢者女性:500ml

 
田川さやか先生よりのメッセージ

今回学んだことが参考になるといいと思います。この前学んだ「スマイルケア」という言葉は高齢者向けの食生活でしたが、幼児や高校生や高齢者向けの弁当作りも誰かが笑顔になるように工夫したり、考えたりすることからスタートするのではないかと思います。「誰かのために」をスタートにがんばってください。